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「それは推測の域を出ないものであって明確な証拠にはなりえないだろう」
まるで探偵の様なその口ぶりに部長は顔をしかめた。
「居るわけないだろそんなもの」
「さあ? 幽霊を見たという人全員が精神疾患を患っていたと言うデータでもあるんだろうか?」
「め、目の錯覚って事も、あ、あるんじゃない、かな?」
二人の会話に意外にも引っ込み思案な石塚が少し吃りながら口を挟んだ。
「ほ、ほら、に、人間の脳って、け、結構いい加減で、だ、騙し絵なんかを見てたら、う、動いている様に見える、とかってあ、るじゃんか?」
「脳の誤作動。つまり幻覚というわけだ」
まるで部長は心強い味方をつけたかの様ににやりと笑みを浮かべてそう言ってのけたのだが、明神は顔色一つ変えない。
「なるほど、じゃあ何故脳はそんな誤作動を起こすのだろう?」
「電磁波の影響をもろに受けた場合い、頭のおかしくなる人間も居る。卵を電子レンジで加熱すると爆発するだろう? あれと同じ事が人間の脳内にも起こるんだ」
それは確かに聞いた事がある。変電所の傍に住んでいた人が電磁波の影響を受けて頭がおかしくなったとか、IHや電子レンジが放射する電磁波を受け続けると知能が低下するとかそういう話しはもっぱら何処にでもある。
「じゃあ霊を見た人達は全員脳の血管が何本か破裂しているわけだ」
その言葉に部長が口篭った。そうなれば多分脳卒中とか脳梗塞で霊を見た人たち全員がそこで死ぬ事になるだろう。死ぬ間際に見た霊の存在を一体誰に語るだろうか? 逆に、脳出血を起こした人たちが全員霊を目撃したと言う話しもない。
「じゃあ霊が居るって言う証拠を見せてみろよ」
今まで黙って二人の話しを聞いていた松岡が言葉をついた。それを聞いて真っ先に由美が立ち上がって口を開く。
「やめようよ。ねぇ、居るって証拠もないけど居ないって証拠もないから面白いんだよねぇ。居もしない霊の話しで盛り上がるのも良いけど、居るか居ないかで議論しあう方が本来の部活らしいよねぇ?」
由美の言い分は最もだ。そもそも幽霊研究部と言う名目の部活であるならば、「居もしない」と言う前提で幽霊の話しを面白おかしく貶し合うのではなく、「居るのかもしれない」と言う観点からも議論をするべきだ。
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