幽霊研究部

5/6
前へ
/66ページ
次へ
「じゃあこうしないか? 俺は霊が居ると言う証拠を君たちに提示する。その代わりに君たちも霊が居ないと言う証拠を提示する」 彼の言葉に、その場に居た全員が息を飲んだ。真っ先に部長がずれた眼鏡を直しながら口を開く。 「そんなの出来る訳ないだろう」 「霊の存在を否定するのに?」 そこまで言われると引き下がりにくくなる。彼はそこまで読んでいたのだろう。 「で、で、でも、どう、やって?」 そこに居た誰もが思ったであろうその言葉を石塚が代弁した。そもそも、見る事も触れる事も出来ない霊の存在を否定する証拠だなんて……あるわけが無い。そんな胸中を察してか、明神は部員の顔を一つ一つ見つめながら静かに口を開く。 「この学校にだってあるだろう。七不思議」 まあ、何処の学校にだってある。音楽室の壁に飾られたベートーベンの目が光るとか理科室の骸骨の標本が動くとか……そんなたわいもない怪談話だ。 「でもそれで実証するって言うのならもう霊は居ないって事になるんじゃないか? 確か一番目は空き教室で怪談話をしていると幽霊が出るって話しだったし……」 松岡の言葉につられて私も頷いた。幽霊研究部が出来てからずっとこの空き教室で毎日みんなが持ち寄った霊の話しをしているが、幽霊が出た事など一度だってない。 「二番目は?」 「確か、校舎西側の二階の男子トイレだったよねぇ。一番奥のドアを四回ノックしてから開けると男子生徒の霊が襲ってくるって話しだったよねぇ」 明神に促されるまま由美がそう言った。流石にそれは女子の私たちには検証のしようがない。 「解かった。じゃあ僕がそのトイレに行って来るよ。それで何もなかったら霊は居ないと言う証明になるね?」 部長が立ち上がると、明神は軽く頷いて見せた。何もなかったら……じゃあ、何か起こったら必然的に彼の幽霊肯定論が正しくなると言う事なのだろうか? 「じゃあ明日、報告を楽しみにしていなよ」 そう言うと鞄を持って部室を出て行ってしまった。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加