第4章 12月6日(土) 午前11時50分

14/14
253人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「君は異論があるんじゃないのか?」 「同じ意見じゃないとつるめないわけじゃないだろ。それに、俺はこいつが心配なんでね」  悠馬が翔の肩を無理矢理抱く。よせよ、とその腕を振り払い、翔は恭平に向き直った。 「それじゃ、よろしくお願いします。網野さん」 「恭平でいいって言ってるだろ。敬語もやめろ。あとはまあ、……オッサンはやめてくれよ。これでもまだ三十五だ」  後半は悠馬に言い、彼とも握手を交す。 「それで、どこから始めるんだ? まずは八季の人たちが集まるヒトツキから、とか?」 「気が早いな、君は」  恭平は苦笑しながら、こつり、とテーブルを指で弾いて考える素振りをした。 「ヒトツキについては、俺も調べたことがあるが――あれは八季だけでなく、普通の人間も出入りしてる交流会みたいなもんなんだ。人間も参加するヒトツキで、人間の肉が出るはずもない」 「へえ、そうなんだ」  確かめるように振り返った悠馬に、翔は頷いてみせる。 「ヒトツキに八季だけしか参加してなかったら、オレたちよりずっと前に、解放同盟が殴り込みをかけてると思うよ」 「たしかに」  解放同盟の名前に、悠馬は鼻白む。そんな悠馬を横目に、恭平が口を開いた。 「……ちょっと気になってることがあるんだ。明日は土曜で学校もないんだろ? だったらやつらに気取られないうちに、それを確かめに行ってみたいんだが……」 「いいけど、どこへ行くんだ? 俺はもうあの車に乗るのだけは勘弁だぞ」 「まあそう言うなよ」  あからさまに嫌な顔をする悠馬に、恭平はにやっと笑ってみせた。 「ちょっと長めのドライブになる予定だからな」 「まじかよ……」  悠馬が頭を抱えて呻き声を上げる。 「酔い止めを買ってくるか……」  親友の悲痛な声に、翔は久しぶりにも思える笑みを漏らした。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!