第1章

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「お、今日、天秤座一位じゃん、ラッキー」  彼女はめざましテレビを見てにやけている。  私はその姿を見て毎回、がっくりとくる。天文部だったくせに情けないと――。 「ねえ、見て見て、一位だって。あなたの山羊座は何位だろうね?」  彼女は朝飯のトーストを食べながら私に同意を求めてくる。もちろん私は頷くわけにはいかない。  私の仕事は天文物理学者だからだ――。 「どうしたの? そんな暗い顔をして」 「いや、何でもない。それより朝食を頼む」 「はいはい」  そういって彼女は台所に向かった。  ……だいたいなぜ星占いというものが存在するのだろう。  私は未だに理解できない問答を繰り返すことにした。  地球には地軸があり23,4度に傾いている。その角度があるからこそ一日の昼夜に変化が生じ、季節が生まれる。日本の素晴らしい四季を作っているのはこの地軸のおかげだ。  しかしその地軸はもちろん変化し続ける、41000年周期でおよそ21~24,5度の範囲で動いているのだ。ということは星占いの中心にある北極星を見る角度も年によって違うということになる。  つまり、昔から方法を変えていない星占いには科学的根拠はどこにも存在しないのだ。
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