第1章

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「何をぶつぶついってるの?」  嫁にいわれ我に返る。彼女には何度もこの説明をしているのに、全く理解して貰えない。天文部だったのにだ。  だいたい12星座でひとくくりにすることがおかしい。まるで色でしか個人を識別できていないようで、その人が持つ個性を否定しているようにすら感じるのだ。 「……いや、何でもない」 「気になるじゃない。教えてよ」  一から教えたらまた彼女の機嫌を損ねることになる。朝から喧嘩などしたくない。 「別にたいしたことじゃない。うまそうだな」  そういって私はトーストを齧った。いつもと変わらないちょっと焦げたものだ、だがもちろん文句をいうつもりもない。出るだけマシだという生活習慣がついているからだ。 「あーやだやだ、むっつりしちゃって」彼女は私をじっとりとした目でねめつけてくる。「昔は私のことが好きで好きで、たまらないって感じだったのに、仕事の方がいいですか、そうですか」 「何もいってないじゃないか」 「目がいってますぅ」  鋭い。彼女のこういった感覚だけは侮れない。これが理論に向かえば、どれだけよかったことか。 「どうせまた、地軸かどうのこうのいうんでしょ」
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