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 どれだけ好きだと言おうと、千歳に取って最終的にその一言で片付いてしまう。拒んだのは千歳であるが、去って行くのなら千歳にしてみれば「嘘」の一言で全て同じカテゴリで片付いてしまうのだ。一度告白されて、拒んだら「嫌い」だと言われるのも、何度も好きと言われて、拒み続けた結果、去って行くのも結局は千歳に取っては同じだ。安易に愛情を語る者を千歳は嘘つきだと思っている。貫き通せないならば、言わない方がいいのだ。頑なな千歳の態度は誰にも理解されないが、千歳はそれでも困ってはいない。無駄に揺さぶられる事を一番に嫌う。  唯一、ずっとつるんでいる神楽は千歳に余計な事をさして言わない上に、神楽自身軽くて軽薄な外面だが、本心は人には見せない似たような気性であるから、つるむ事も出来る。  結局は誰も、千歳の本心を暴かない。その方が、千歳は楽なのだ。誰に対しても同じ態度しか取らない。誰にも特別だと思われないようにする。安易な特別視は裏切りでしかない。ならば、初めから黙殺する。 「千歳、煙草」 「ーーあ? 何? 聞いてなかった」 「煙草。灰が落ちる。っつか、それもう直ぐ火傷すんぞ」
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