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 神楽に言われて、千歳は一口しか吸っていない煙草が既にフィルター近くまで灰になって今にも落ちそうなのに気付いた。灰を落とさない様に慎重に空き缶に捨てる。 「千歳さあ、誰かに言い寄られた後って落ちるよな」 「何それ。初めて聞いたけど」 「いや、今までは大して粘る様な奴居なかったから気のせいかと思ってたんだけど。千歳さ、自分で拒否る癖に、その後落ちてるよ」 「勝手な憶測押し付けんな」  千歳は神楽の言葉に苛立ってもう一本煙草を出して火をつけた。神楽は苦笑する。  千歳が何より嫌うのは、他人から自己を決めつけられる事だ。自覚している部分に関しては譲歩も出来るが、勝手な憶測を立てられるのを酷く嫌う。それは誰に対しても等しく平等だった。神楽であっても例外はない。 「藤真がお前の事、構うの解る気がするなあ」 「神楽、あいつの味方だもんな」 「俺は基本的にはどっちでもないよ。でも、外面じゃない千歳って、一回見たら癖になるんじゃないのかな」  千歳は神楽の言葉の意味を測りきれずに、顔をしかめて煙草を吸い込んだ。
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