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*****  千歳は未だに夢を見る。以前と変わらない夢だ。藤真に好きだと言われる夢。変わらず、千歳は黙り込む。変わらず、藤真は「それは、希望がないなあ」と言って去って行く。後ろ姿を見る千歳の気持ちが変わっていた。痛い心はそのまま「嘘つき」と叫びたいが、叫ぶことも出来ない。罵倒する事も出来ない。  夢を見ると酷く千歳は疲弊した。最早、その他大勢でしかない藤真を夢に見てしまう事自体に疲弊した。それ以上の何かがある様な、心の燻りは全て黙殺する。何かになど、気付きたくはない。疲弊した心は睡眠不足を呼び、梅雨の息の詰まりそうな静かな雨に神経を鈍らせる。
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