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 誰か好きな奴。そう問われても千歳には難しい。誰に対しても、そんな感情は持った事がなかった。それは千歳が誰にも興味がなかったのではなく、それを恐れていたが故である。ちゃんと他人に感情移入をするのを恐れて、他人に深く関わる事をしないでいた。  その記憶は今までの生き方を否定される様で千歳を蝕む。 「……ちっ……。何なんだよ、あいつ」  大学構内の廊下で千歳は吐き捨てた。無駄に千歳の記憶が鮮明な分、苛立ちは増すばかりだ。
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