嫌い。嫌い。好き。

ー1ー

　春先の眠くなる陽気に千歳は放課後の部室でぼんやりしていた。眼鏡も邪魔で、外して机に突っ伏している。

　部室の窓からは先週から開花し出した桜が徐々に花を増やしているのが見える。三月の下旬。もう既に、春休みに入っているが、千歳は何をするともなく部室でうたた寝を決め込んでいる。特に大学に用事がある訳ではないが、かと言って自宅に居ても暇を持て余してしまう。それだけの理由で休みにも関わらず、千歳は部室に入り浸っていた。無理矢理理由をつけるとするならば、その部室は窓から敷地に植えられた桜がよく見える絶好のポジションで、三月の下旬から四月の上旬までは花見に最適なのだ。

　冬の寒さから緩んだ春先の空気は窓を開け放しても眠気を誘うばかりだ。

風に乗って桜の花びらが舞い込んで来る。ひらり、と舞い込んでは音もなく落ちていく花びらを曖昧な意識のまま千歳は見つめる。