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 講義が通常通り始まり出した四月下旬。講堂での講義に千歳は神楽と共に階段教室に入った。すり鉢状の教室の中程から声がかかって、千歳は驚いた。 「千歳、こっち来いよ」  中段の席から藤真が声をかけてきた。 「お前、あいつとそんな仲良かったっけ?」  隣の神楽が千歳に言う。 「そうでもない。寧ろ、余り話した事ないはずだけど」 「ふーん。千歳が人に声かけられるのって、珍しいよな」  千歳は神楽の言葉に答えなかった。眼鏡の位置を直し、声をかけてきた藤真の方へ向かう。 「何? 藤真、何か俺に用事あったっけ?」 「つれないじゃねえか。講義同じなんだから、こっち来いってだけだよ」 「俺は迷惑だけど」 「何だよ、千歳。こないだから随分突っかかるよな!」 「別に。藤真の気のせいじゃねえの」  千歳が藤真と交わす言葉は無愛想どころではない。言い過ぎた事に千歳が気付いた時には、神楽が仲裁に入っていた。 「千歳、何下らない事にムキになってんだよ。いいじゃねえか、講義の席ぐらい」
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