第11章 不可解な出来事

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 何やら思わせぶりに何か言い始めたと思ったら、大慌てで突然鳴り出した着メロに反応した弘樹を、祐司と幸恵は半ば呆れ気味に見やった。そんな視線などものともせず、弘樹が上機嫌で通話を始める。 「やあ眞紀子さん、感激だなぁ。眞紀子さんの方から電話をくれるなんて。初めてだよね? 今日は俺の熱意がとうとう伝わった、記念すべき日に…………。はい、すみません。黙ります。それでご用件は?」  どうやら叱り付けられたらしいと、祐司がビールを飲みながら内心で溜飲を下げていると、唐突に「はい?」と弘樹が上げたらしい戸惑った声が聞こえた。 「ええ……、はい。その話は本人から聞きました。と言うか、今まさに目の前で聞いていた所なので」  それを耳にした幸恵が、祐司と同様に怪訝な視線を向ける中、弘樹はチラリと二人を横目で見やりながら、話を続ける。 「はぁ……、なるほど。そういう事でしたか。良く分かりました。取り敢えず本人には、俺から伝えておきますので。…………はい、ご連絡ありがとうございました。失礼します」  そうして壁に向かって深々と一礼してから、弘樹は携帯電話を無言でしまいこんでから、真顔で祐司に向き直った。 「喜べ、祐司。綾乃ちゃんに着信拒否されていた理由が分かったぞ」 「それがどうして喜べるんだ!」 「最近、お前のマンションに貴子さんが来て、料理を作り置きして帰っただろう?」  いきなり変わった話に、祐司は戸惑いつつも素直に頷いた。 「ああ、電話をかけてきた時につい愚痴を零したら、『不摂生してるから、ろくでもない思考に陥るのよ。ちゃんと食べなさい』って言われて、買い出しに付き合わされて、山ほど惣菜を作っていってくれたが。どうしてそれが分かったんだ?」 「土曜日にか?」 「土曜日だったが」  祐司から(いきなり、何を言い出すんだこいつ)的な視線を受けた弘樹は、疲れたようにたった今聞いたばかりの内容を、端的に告げた。 「買い出しから帰って来たお前達に出くわした綾乃ちゃんが、二人を恋人同士だと勘違いしたらしい」 「……はぁ!? 何だってそんな誤解をするんだ!」  一瞬遅れて祐司は声を張り上げ、幸恵もあまりの事態に固まった。そこに弘樹の補足説明が加わる。
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