第3章 謝罪にならない謝罪

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「その高木とやらと綾乃ちゃんがメールで直接やり取りした時、『当日は姉の合コンに無理やり引きずり込まれた挙げ句、酔った姉を送る途中で携帯電話を落としたので、合コンでしつこく絡んでいた相手に携帯を抜き取られたと勘違いした』って説明したとか聞いたんだけど」 「はい、その通りですよ?」 「既婚者が弟同伴で合コンに参加するの?」 「…………あれ?」  思わず足を止めて首を傾げた綾乃を見て、同様に立ち止まった眞紀子は深々と溜め息を吐(つ)いた。 「『あれ?』じゃ無いでしょう。やっぱり付いて来て正解だったわ。何か簡単に騙されそうで、危なっかしくて」 「ごめんなさい……」  思わず項垂れて謝ってしまった綾乃を、眞紀子が慌てて宥める。 「大丈夫よ。私が付いている限り、変な事にはさせないから。勿論、綾乃ちゃんには指一本触れさせませんからね」 「ありがとう、眞紀子さん……。あ……」  ニコッと綾乃が嬉しそうに笑い、眞紀子も釣られて表情を緩めたが、そこで自分越しに綾乃が視線を向けた人物に向かって勢い良く振り返り、睨み付けた。 「げ……」 「うっ」 「何か?」  綾乃から同伴者がいるとは連絡を受けていたものの、てっきり社内の口の固い友人とかだと思い込んでおり、初対面の時に祐司に強烈な蹴りをお見舞いした眞紀子だとは予想していなかった二人が思わず呻き声を上げた。それを見た眞紀子が如何にも面白く無さそうに睥睨すると、弘樹が焦ってその場を取り繕おうと言葉を絞り出す。 「いや、ええと……、本日はお日柄も良く……」 「夜になってから何ほざいてんのよ。それとも寝言? 目を開けたまま寝言が言えるなんて器用なのね。羨ましいわ」 「眞紀子さん……」 「…………」  戦闘意欲満々で容赦のなく切り捨てた眞紀子の台詞に、綾乃が顔色を変え(やっぱり眞紀子さんにお願いしたのは間違いだったかも)と一瞬後悔してから、慌てて弘樹と祐司の方に足を踏み出し、その場を取り繕おうとした。 「遠藤さん、わざわざご連絡頂いてありがとうございました。それに高木さんも、今日はご馳走して頂く事になって、ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げた綾乃に、男二人は救われたように微笑んだ。 「いや、大した事ないから。それより、いきなりメールを送って驚かせてごめんね?」
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