第3章 謝罪にならない謝罪

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「あの場合、悪いのは一方的に怒鳴った俺だし。お詫びの印に夕食を奢る位何でもないさ。しかしその詫びが、お好み焼きで良いのかどうか……。変な遠慮はしないで欲しいんだが」  多少不本意そうな表情で言葉を濁した祐司に、綾乃が慌てて両手を振りつつ弁解する。 「遠慮なんかしてないです。あの、私、どうしても食べたくなってしまったもので……。でも住んでいるマンションの近所に、広島風のお好み焼きを出している所が見当たらなかったものですから、ネットで検索して食べに行こうかと思っていたところでしたし」 「それなら良いんだが」 「何か最近、色々気弱になってた所にあんな暴言吐かれて、軽~くホームシックになりかけてたのよね~、綾乃ちゃんは」 「ま、眞紀子さん」 「…………」  すこぶる非友好的な態度で皮肉をぶつける眞紀子に綾乃は狼狽し、祐司は下手に弁解せず黙り込んだ。そこで弘樹が唐突に口を挟む。 「そうすると綾乃ちゃんって、広島出身なの?」 「はい。ずっと地元に居て、大学卒業後に初めて出てきたので、知り合いとか友達も殆ど居なくて」  幾分恥ずかしそうに綾乃が告げると、弘樹は笑顔で話を続けた。 「ああ、そうなんだ。でも入社してから、それなりに友達とかできたよね?」 「いえ、それがあまり……」 「そうなの?」  ちょっと驚いた表情を見せた弘樹に、綾乃が幾分気まずそうに続ける。 「でもそれは、半分は私が悪いと言うか……、何と言うか……」  幾分表情を暗くしてそんな事を言い出した綾乃に、弘樹と祐司は(別に性格が悪そうには見えないが)と思わず顔を見合わせ、眞紀子は険しい表情になって問い質した。 「どういう事? この前の話も歯切れ悪かったけど、何か社内で虐められてるとか?」 「そ、そういう事じゃなくって……」  どう説明すれば良いかと本気で困惑している綾乃に、ここで弘樹が助け船を出した。 「まあまあ、取り敢えずもうすぐ店だから、そこで食べながら落ち着いて話をしようか。俺達は部署は違うけど先輩なんだし、心配事があるなら相談に乗るよ? それなりにアドバイス出来ると思うし、一応社長令息の立場としては、こんな可愛い子が虐められていたら放置できないしね」 「え? あの、そんな……」  弘樹に笑顔でウインクされながら言われた内容に綾乃が戸惑っていると、横から眞紀子の冷え切った声がかけられた。
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