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安住さんがそう言った数分後、エレベーターが一階まで降りてきた。フロントからはよく見えないが、エレベーターの階数表示のランプがチラッと見える。
それが一番左端に来ると一階だ。地下はない。
「おっはよーう」
軽い挨拶と共に片手を上げ、フロントに来る男性。上質な仕立てのスーツに、ピカピカの革靴。大きな会社の偉い人かなと憶測。
「おはようございます」
安住さんに合わせて僕も頭を下げる。男性は安住さんに部屋のキーを渡すと僕を見た。
「お、最近入った子だよね」
「はい、いつもありがとうございます」
いつもより口角を上げる、というか横に引き伸ばしてる感覚で浅く頭を下げた。
「うん、毎月来るからね。次もまた来るよ」
「お待ちしております」
安住さんが「いつもありがとうございます」と声をかけると、お会計が始まる。
僕はあまりその手元を見ないようにしながら、ロビーに視界を広げた。
そのうちに会計が済み、思ったよりも少ない荷物を持って表にまわったタクシーに乗り込んでいった。
「今のは、超常連客だよ。顔、覚えられるかな」
「努力します」
だから、週に二回しか……。
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