第2章

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僕が起きている間に圭が帰って来なかった事を気にしてる訳じゃない。お互いに子どもじゃないんだから。 連絡を寄越さなかった事でもない。そもそも圭は携帯持ってないし。 僕のベッドで寝ていた事は、さすがに驚いたけど……別に、なんとも思ってない。男同士だし。 流しの中に僅かにある洗い物を、今しなくてもいいのに片付けてみる。 圭が気にしてるように、僕は怒ってはいないんだ。いつもの通りにやっているつもり、なのに。やっぱり何かがおかしいんだろう。 目覚まし時計を止められなかったから、そうだ、それだ。目を覚ましたのに目覚ましを止められなかった、だから何だか変な気分なんだ。 それに、いつもより頭がスッキリしてる。いつもよりよく眠れたから……? 君の夢を見ないほどに、眠りの底へ沈んでしまったから? あんなに君を想っていたのに。圭が来る前は、ひとりでこの部屋にいた一年の間は、絶えず君との夢の会瀬を繰り返し、楽しみ、そして朝には落胆していたというのに。 僕の中から、心の中を埋め尽くしていた君の面影が、ほんの少し揺らいだ事が一番なのかもしれない。
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