第2章

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「伊万里ー」 後ろから圭の声がして、僕は腕を下ろした。振り返り「どうしたの」と問いかける。 圭は洗濯カゴを片手に自分の服を入れていた。 「伊万里は洗濯物、ないの?」 「あぁ、じゃあパン屋のエプロンと、ジーパンも」 僕は洗い物を後にして、洗濯物を取りに行く。そのあとをついてくる圭。ガタイがいいくせに、なんとなく小動物みたいな行動だ。 「今日はなんのバイトだ、伊万里?」 バッグからエプロンを出していた僕は、しゃがんだまま圭を見上げた。 「ホテル」 「は?」 キョトンと口を開く圭に、僕は「ホテルだってば」と繰り返す。カレンダーにも書いてある。"ホテル"って。 「僕のシフトはちょっと遅めだから、帰りも遅いよ。夜ご飯、どうしようか」 すぐそばの目覚まし時計を見れば、針はもう八時をさす。そろそろ支度をしなければ。 「いや、晩メシとかじゃなくて、ホテルってどんな仕事?」 「どんなって……接客」 エプロンとジーパンを圭が抱えるカゴに入れて「洗濯頼むね」とカゴを叩いた。 まだ何か言いたそうな圭をおいて、洗い物を片付け、備え付けのクローゼットを開きスーツを取り出す。
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