第2章

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週に二回しか来ない僕で遊ぶのはやめてほしい。 「そのうち、ちゃんとしめかた覚えますので」 「覚えなくていーぃ」 安住さんの指の短く切り揃えられた爪が、チョンとネクタイをつつく。 ―――"ねぇ、綺麗な指してるよね"――― こんな時でも君は僕に、僕の心に語りかけてくるの? 君にそう言われた日、僕は初めて君の言葉を否定した。 君の手指の方が、きれい。 そう言ったら、君の頬がふわりと赤くなった。 「ちょっと、伊万里くんに構うのはここまで」 「あ、専務」 安住さんがビクッと肩を震わせる。僕もハッとして「おはようございます」と頭を下げた。 清掃のおばちゃんの噂話では、もう五十手前なのに結婚もせず、仕事一筋の人らしい。 キリッとした佇まいに、わずかにちらつく白い髪。それさえもまとめてカッコ良く見せる整った顔立ち。 「伊万里くん、すまんね。安住ちゃん、男に餓えてて」 「……えっ」 「やぁだ、専務! 私は伊万里くんに餓えてるんですぅ」 「ええっ」 ちゃんと後から冗談だと専務がフォローしてくれたけど、安住さんの目は違うようだった。 背筋がゾクッとする。
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