第2章

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今、フロントにいるのは二人の女性従業員。安住さんと僕が入ってきた事に気付くと、同時に振り向いた。 「「おはようございます」」 ぴたりと合った挨拶、瓜二つな笑顔、ぶれない仕草。彼女達は双子だ。 同級生にも双子はいた。学校全体なら二、三組いたかもしれない。でも二人並ぶとなんとなく違いがわかるものだったが、彼女達は何もかもが同じなのだ。 安住さんが彼女達と引き継ぎをしている間に、僕がどっちがどっちだかを当てて、声をかけるという暗黙のゲームがあった。 だから、週に二回しか来ない僕で遊ぶのはやめてほしい。 「「では、お先に失礼します」」 彼女達が椅子から立ち上がり、僕の前に立つ。うぅ、並んでいても違いがわからないのは、化粧のせいかな。 「お疲れ様でした、奈乃羽さん、湖乃葉さん」 僕は奈乃羽(なのは)さんを右側、湖乃葉(このは)さんを左側として目配せして挨拶した。 一瞬の沈黙の後、彼女達は微笑んだ。 「「はずれー。またねー」」 ひらひらと手を振る角度も一緒にフロントから去っていく二人。フロントと繋がるドアは狭い為、さすがに並んで通る事は出来ないが。
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