第2章

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柿崎様は少し垂れた目尻をスッと更に下げ、教えてくれた。 「うん、伊万里焼きというのは、明治時代以降に伊万里市というところで焼成された陶磁器の事をいうのだよ」 「名前はその土地の名がつくんですか?」 この人は、焼き物に詳しい方なんだろうか。こうして話して聞かせてくれるくらいだから、少なくとも好きなんだろう。 「うん、明治初期に焼き物を産地名で呼ぶようになったそうだよ」 へぇ、と声を漏らす事しか出来なかった。そもそもあまり興味はないのだ。ただ、自分の名前が同じなだけ。自分の名前が実際にこの焼き物から頂いたものだという事だけ。 「うん、伊万里焼には"古伊万里"というものもある」 「こいまり?」 可愛らしい呼び名だと思った。柿崎様が目の前の皿から目を離すと、僕と同じ高さで目があった。 「古伊万里というのは、江戸時代に有田で焼成された、歴史的骨董的価値のあるものをいうんだよ、うん」 その時代に作られた焼き物は、古伊万里と呼ばれ、価値がある。明治時代以降に作られた焼き物は、新しいものという事かな。 「うん、君は、とても素直だね」
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