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そうだろうか。いや感情が表に出ないのだから、素直とは言えないだろう。
「いえ、僕は……」
うつ向く僕に、柿崎様はゆっくりと首をかしげた。
「あまり興味が無いだろう、うん。悪かったね、伊万里くん」
「そんな、すみません、えっと」
「いいんだよ、うん。わかりやすい子だねぇ」
薄い眼鏡のレンズがライトに反射する。でも驚異とか、圧迫感のようなものはなく、ただ柔和な目元を隠しただけだった。
「うん、わたしの他にもきっと、君をよく理解してくれる人が表れるだろうね。その人が君の事を、君の価値を理解してくれるといいねぇ」
「僕はそんな……」
価値なんて。
伊万里焼や古伊万里のような価値なんて、僕にはない。そんな風に言われてしまったら、僕は父に反抗心を持つかもしれない。
見る人によって僕の価値が変わる。それはよくある事だろう。同じ価値の人間なんていない。
目の前で二人の人が川に流されていて、どちらかしか助けられないなら、どちらを助けるか。それはきっと、より親しい人間に手を伸ばすだろう。
僕は誰を助け、誰を見捨て、そして。
誰が手を差しのべ、誰が背を向けるのだろう。
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