第2章

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伊万里焼の大皿をしばらくじっと見ていた柿崎様に、近付く影があった。 「これはこれは、柿崎様。おはようございます」 ピシッとスーツを着た専務だった。柿崎様も片眉をピッとあげて、微笑む。 「うん、今朝の朝食も美味しかったよ」 ああ、朝食後にロビーを通りかかったのかと納得して、そういえば安住さんは、とフロントを見ると、他のお客様の会計をしていた。 「またこの皿をご覧になっていたんですか」 専務の視線が僕よりも高い位置から大皿を見つめる。柿崎様はゆっくりと首を縦に振るとすいっと腕をあげ、大皿の縁を爪で弾いた。 ……え、さっきの言い方だとこの伊万里焼、江戸時代に作られた古伊万里よりは新しいものとして、価値に差があるのは当然だろうけど、それでも直接触れたりましてや爪で弾いたりなんてしたら……っ。 僕は口を挟んでいいものか見当がつかず、伊万里焼の大皿と、柿崎様と専務を順番に見ている事しか出来なかった。 「うん、良くできた……レプリカだわね」 柿崎様は弾いた場所を今度は指先でなぞる。それは、兄弟喧嘩をしていた兄が、弟の頭を撫でているかのような、親しみやすさで触れていた。
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