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「……レプリカ?」
弾いたり撫でたり、されるがままの伊万里焼を見て、専務のカミナリが落ちるのではと首を引っ込めそうになっていた僕は、改めて柿崎様と専務を交互に見た。
専務は口角を片方くいっとあげ(これはさっき安住さんが言ってた笑顔とは違う気がすると、僕でもわかった)僕を見下ろす。
「そうだよ、伊万里くん。このふたつはレプリカ……偽物なんだ」
こんな駅前のビジネスホテルに本物を置くわけがないだろうと、専務は笑う。しかしその笑みは柿崎様の鼻息で飛んでいった。
「ふん。うん、しかし"良くできた"と言ったろうに」
「えぇ、瓜二つですよ、流石です」
なんだか話を聞いているだけだと、悪どい内容な気がしてくる。僕はそろそろ安住さんのところに戻るべきかと考え始めた。
「伊万里くん、このふたつは柿崎様の作品なんだ」
専務があまりにもサラッと言うものだから「へぇ、そうですか」とそのまま流してしまいそうになった。
「えっ、手作りですか?」
「このふたつは手作りだぃ。工場製品が蔓延る世の中だからねぇ、うん」
柿崎様の爪弾きが僕の二の腕を捉えた。
……失礼しました。
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