第2章

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専務が実は悪代官なのではないかという疑惑を、柿崎様が弾き飛ばし、僕は二の腕を押さえながら柿崎様の話に聞き入った。 「うん、うちは代々陶芸家の家系でね、父も兄も弟もその道に進んだよ。わたしはあまり得意でなくてね、父の元に居た時にこのふたつのレプリカを作っただけでやめたんだ、うん」 得意でないと言いながら、この伊万里焼(レプリカ)の完成度は、素人目に見ても相当の出来なのではないか。 こうしてロビーに飾っても遜色のない存在感、かといって派手すぎず控えるところは控えて、出しゃばらない謙虚さ。 これはレプリカだ、そう言われなければわからないのだ。でも専務は薄い笑みを浮かべて僕の肩に手を置き、言った。 「貴重な作品をふたつともうちに提供くださって、感謝してますよ」 「うん、アホか、このスットコドッコイ」 柿崎様の口調が乱れた。 専務はさっきと変わらず、薄い笑みを貼り付けたまま。どうやらお客様を怒らせた訳ではないらしい。 そこに、フロントから出てきた安住さんが柿崎様を呼び、割って入った。 「お迎えの方がそろそろいらっしゃると連絡がございました」 「おぉ、もうそんな時間か」
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