第2章

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伊万里焼の大皿が、ぐらりと揺らいだ。 「!!」 僕は心臓が縮み上がるのを感じつつ、反射で手を伸ばしていた。でも僕の手より専務の方が近いし長いしで、結局僕は腕を伸ばしただけの姿勢で固まった。 「ふぅ、危うくあのじーさんの顔が古伊万里色になるところだった」 専務、面白くないです。 もとの位置に戻された大皿も、なんとなく冷や汗をかいたのでは、なんて思っていると専務が僕の背中をポンと叩いて言った。 「柿崎様の言った事、全てを真に受ける必要はないからね」 「何故ですか」 「あれ、そんなにいい事言ったように受け取った?」 専務が少し驚いたような顔をする。どんな表情も様になる人だ。 「生きていれば、いろんな情報は入ってくるし、出会う人によって影響を受けたりするだろう。 それは当然の事だけど、その全てを抱え込む必要はない。大事なのは、自分にとって……君にとって何が大事なのか、何を必要としているか、じゃないかね?」 ただでさえ、情報が溢れる世の中だ。 その全てを取り入れていたら、きっとパンクする。 重要なのは、自分にとって必要なものは何か、必要なものがあるか。
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