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伊万里焼の大皿が、ぐらりと揺らいだ。
「!!」
僕は心臓が縮み上がるのを感じつつ、反射で手を伸ばしていた。でも僕の手より専務の方が近いし長いしで、結局僕は腕を伸ばしただけの姿勢で固まった。
「ふぅ、危うくあのじーさんの顔が古伊万里色になるところだった」
専務、面白くないです。
もとの位置に戻された大皿も、なんとなく冷や汗をかいたのでは、なんて思っていると専務が僕の背中をポンと叩いて言った。
「柿崎様の言った事、全てを真に受ける必要はないからね」
「何故ですか」
「あれ、そんなにいい事言ったように受け取った?」
専務が少し驚いたような顔をする。どんな表情も様になる人だ。
「生きていれば、いろんな情報は入ってくるし、出会う人によって影響を受けたりするだろう。
それは当然の事だけど、その全てを抱え込む必要はない。大事なのは、自分にとって……君にとって何が大事なのか、何を必要としているか、じゃないかね?」
ただでさえ、情報が溢れる世の中だ。
その全てを取り入れていたら、きっとパンクする。
重要なのは、自分にとって必要なものは何か、必要なものがあるか。
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