425人が本棚に入れています
本棚に追加
只今より3番線に電車が到着します、白線の内側まで、お下がり下さい…
斉藤 沙弥は夕方のラッシュを過ぎた駅のホームにいた。
「疲れた…」沙弥は昼間の上司とのやり取りを思い出して、深いため息をついた…
お待たせしました、3番線に区間急行、あざみ台行きが到着いたします、危険ですから白線の内側まで下がってお待ち下さい!
ガタン、ガタン…
沙弥の前に滑り込む電車を見つめ、沙弥は帰りの食事の事を考えていた。
何を食べようかな…
プシュ~
電車の扉が、音を立てて開いた。
沙弥は車内の空いている席を探した。
ラッシュを過ぎたとはいえ、帰宅の人々が、まだ多く、空いている席は少なかったが、少し狭い隙間の席を見つけると、素早く席に滑り込んだ。
ふぅ… 良かった…
沙弥の自宅の最寄り駅まで、この電車で22駅、区間急行だから停車駅は16駅だ、いつものように、目を瞑り考え事をしていれば、あっという間だ。
沙弥は目を閉じた…
隣の男性はカチャカチャと忙しなくパソコンのキーを叩いていた。
そんなに頑張っても、会社は貴方を数字でしか評価しませんよ…
沙弥は皮肉混じりに、そう思った…
多分左の座席の一つとばした席は、女性だ…仕事は…多分、お水…
フレグランスのキツさ、脚を組み替えた時のヒール音はパンプスではなくハイヒールだろう…
早くタクシーで出勤出来るくらい売り上げが上がると、いいわね…
沙弥は勝手な妄想で微笑した…
ガタン、ガタン… カツッ!
誰かが私の前に立った…
他に立つ場所ないの…?
沙弥は目を瞑りながら、スカートを膝まで伸ばし、そのまま手を置いて、スカートが乱れないようにした。
沙弥が目を閉じている間、前に立つ男?らしき人物は、絶えず脚をうごかして落ち着きがなかった、沙弥はこの席に座った事を後悔した…
最悪だわ…ゆっくり瞑想もできない…
ふぅぅ~
次の瞬間、沙弥の頭の辺りで、生臭い息とため息が感じられた!
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・!
何っ!今の気持ち悪い息は…
最初のコメントを投稿しよう!