めざめ

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満面の笑みで彼はそう言った。 『って言われて護衛してるけど。』 俺は小さく舌打ちして、呟くように言った。 今はショッピングモールに来ていた。 『いやー。欲しいものがあるんだけど命狙われてたらなかなか買い物にも行けなくてね。よろしく頼むよ。ボディーガードさん。』 東谷さんの口車に乗せられて護衛としてここまでRidのビルから30分ほど監視してるが…。 命を狙う輩どころか東谷さんに見向きしてる人すら居ない。 こりゃおそらくこの人の勘違いだろう。 俺はそう思い、東谷さんが服売り場に白馬と入っていくのを見届けて、近くに設置された自販機で缶コーヒーのブラックを買って近くにあったソファーに座った。 ふー。大きく息を吐く。 本当に平和だ。 昔あった事件が無かったかのように。 家族連れが楽しそうにショッピングを満喫している。 父親と母親の間で嬉しそうに手をつなぎ歩く少女。 俺はそんな光景を微笑ましく思い、おもわず笑った。 柄にもない。俺はそう思ってコーヒーを一気飲みした。 『あの、すみません。』 俺がぼーっとしていると申し訳なさそうに俺と同じぐらいの年の女に話しかけられた。
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