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僕らはいつも縛られている。
良好な関係を築くために本音を理性で封じ込め。
安全で円滑に回る社会のために規律で行動を制限され。
優秀な歯車を生産するために学校で思考を調整される。
従順ないい子を自慢するために親のエゴで調教される。
そして地球は僕たちを地面へと縫いつけようとする。
特に夢から覚めたあとに感じる重力には抗いがたいし、一歩間違えれば確実に床に叩き付けようと僕を下へ下へと。
まぁ、何が言いたいかというと...
...寝ぼけて階段の最後の一段を踏み外した。
ビタンッと顔面を強打し、うずくまって悶えているところに騒がしい足音が...まずい。
しんたろうくん が あらわれた!
ぼく は なかったことにした!
「おはよう慎太郎君、どうしたの?」
「あんたの顔がどうした。」
くっ、我が弟ながら素晴らしい切り返しだな。
「ちょっとりんごジュースをむせたら鼻から出ちゃっただけだよモンダイナイョ。」
「そこはせめてトマトって言えよ!りんごは赤くねぇよ!いや赤いけど!」
おっと、頭を打ったかな、チョイスを間違えたようだ。誤魔化さないと。
「赤いけど赤くないって寝ぼけているのかな?」
「寝ぼけて鼻から出てるものを赤いりんごジュースって事にしたアンタにだけは言われたくない...。」
「赤いりんごジュースなんてあるわけないじゃないか。」
「このっ...てか誤魔化されるか!さっきの音絶対こけただろ!ダッs「なんのこと?」」
「いや、こけただろ?」
「なにもなかったよ?」
「鼻血で「なにも、なかったよ?」」
満面の笑みで肩を叩く。
「お、おぅ(やばい、なんつーホラーだこれ)」
どうやらうまく誤魔化せたようで、慎太郎君はそさくさと去っていった。
まったく、朝からこんな苦労をするのも五体倒置を強要した重力のせいだとぼやきながら黙々と証拠を隠滅していった。
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