墜落

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「綺麗だ...。いつまでも君と空を見つめて仲を深めたい...。むしろ見つめあって愛を深めたい。」 駄目だこいつ早くなんとかしないと。 「緊張と興奮でドキドキしてるだろうから吊り橋効果でお持ち帰りも...そしたらあんなことやこんなことも...ハッ、ダメダメ、仕事だからちゃんとしないと。」 あー、空がキレイダナー。 「もったいないけど、そろそろ...逝こうか。」 その声にゾクリと寒気を感じた時にはもう、僕の体は機体から離れていた。 ーーーー逝ってらっしゃい、と遠くで聞こえた気がする。 さっきよりも背中が涼しいのは冷や汗のせいだけではなく。 僕は、何も背負っていなかった。 完璧な仕事だ、やられた。 さすがにこれは助かる気がしない。 どうしようもないから、どうでも良くなった..ほとんど記憶に残っていない本当の両親もこんな気分だったのだろうか。 じい様曰く、両親の乗った飛行機が空港から離陸した直後から何年も、どうしておいてったの、どこにいるのと空を探し続けたらしい...墜ちてるから意味ないのに。 両親を待ち焦がれ続けた僕は、空の上にいる、星になった、いつも見てくれていると言った言葉を信じるようになり、空が嫌いではなくなった。 祖父の死後、たらい回しにされた末に今の家に押し付けられた僕は、空に焦がれるようになった。 自由になりたい、両親と祖父に会いたい、と。 今、その願いが叶おうとしている。 金を手にしてほくそ笑む奴らや自慢の人形を失くして悲劇ごっこに勤しむやつらに腹は立つが、不思議となんの未練もなかった。 それよりも解放感が勝っていた。 墜ちていく間、地面に背を向け、ただ空を見つめていた。 最期の空を目に焼き付け、分厚い雲に突入した瞬間に目を閉じた。 ーーー今から会いにいくよ。
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