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私は袖から、眩しいほどのステージを見つめていた。 彼らの視線は客席に向けられているけれど、練習を見てきたせいだろうか。 私も彼らと一体になっている感覚すら覚えた。 ノッてくると僅かなずれは無くなり、客席の手拍子も曲の一部になる。 そうして、曲は中盤に差し掛かり。 相沢が一歩前へ出て、ソロを弾き始めた。 ――っ! 始めて聞いたあの時よりも、ずっと練習で聞いてた音よりも。 彼の音は何倍も輝き、光の粒となる。 明らかに1人だけ存在感の違う相沢の演奏は、こんな学校のステージなんかで弾いていてはいけないと思った。 『絶対、プロになるから』 ……相沢。あなた、絶対プロになるよ。 そう確信してしまうほど、相沢の演奏は深く私の心に刻み込まれた。 ステージではあっという間に3曲演奏を終えた。 アンコールが響く中、ステージのスケジュールもあるため強制的に幕が閉じる。 「モトくんのドラム、かっこよかったねー!」 「私、チュウくんがいい!!」 「ヤマちゃんの歌も凄い良かったよ!」 「でも何て言っても、アキくんだよねー!!」 女の子たちの声が聞こえてくる。 せわしなくステージの楽器を片付け始める係の人たちの邪魔にならないよう、私は先に体育館裏へと出た。 頭の中には彼らの音が響いていて、それと同じくらい歓声が耳に残っていた。 「もみじ!!」 聞き慣れた声が聞き慣れない呼び方で私を呼んだ。 振り向いたと同時に体にぶつかる。 目の前は壁、ぎゅっと体に圧がかかって、抱きしめられている事に気がついた。 「ちょっ、」 がばっと離れた、今私を抱きしめていたのはチュウくんだった。 っていうか、 「鼻、潰れたかと思った」 ツンと痛い鼻頭に眉を寄せた。 「椛、どうだった!?俺ら、かっこよかったろ!?」 チュウくんが当たり前のように私の下の名前を呼ぶのは置いといて、私はぐるっとみんなを見渡して笑みを向けた。 「うん、みんなカッコ良かったよ」
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