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学校の校門を抜けて、歩きながら私はため息をついた。
「……気持ち悪いー」
「はははっ、ごめんね?上手くもない練習聞かせちゃって」
相沢が苦笑しつつ申し訳なさそうにした。
私は結局、練習の最後まで付き合い、あーでもないこーでもないと口を出し、そして同じ方向だという相沢と一緒に歩いているところだ。
「俺も。久々にあの気持ち悪い感じ、味わった」
相沢の背中にはギターのソフトケース。
金髪にギターのケースを背負う姿にちょっとときめいた。
「相沢のバンドは……えっと、BS?凄く上手いってチュウくんたち言ってたね」
「まぁね。中2から組んでるし、厳選したメンバーだし」
「厳選したって事は、相沢がメンバー集めたんだ?」
「んー?集めたっていうか……集まった」
思いだすように空を見つめながらフッと微笑んだ相沢の表情に、キュンと胸が鳴った。
風になびいたサラサラの金色、メンバーを思いだす表情、真っ直ぐな瞳。
「かっこいいなぁ」
呟いた私に、相沢はゆっくり視線を向けた。
「ふっ、ありがと!」
ちょっと笑って、語尾が上がるお礼の言葉。
うん、コレは。
「言われ慣れてるねー」
「それほどでもー」
口の端を持ち上げた私に、相沢は元から持ち上がったような口の端をもっと持ち上げた。
「BS、解散しなくてよかったね?」
「あー、うん」
「やっぱり高校別になるとか、そんな感じで?」
「まぁねー」
「続けることにしたのは、何故?」
次々と質問する私に視線を向けて、相沢は含みのある笑みを作って視線を反らせた。
「んー?」
ぼんやりと聞きかえすように返事してから、呟く。
「秘密」
「秘密か」
「しいて言うなら……そうだなぁ」
視線をもっと上に持ち上げた相沢は。
「偶然で、必然で、運命」
何かを思い、嬉しそうに笑った。
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