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確かに……私は聞いたのだ。
マオという男の思いを……
――――――
「だぁぁ!! いい加減、泣き止め!! 鬱陶しい!!」
そう言いながら、オニクがどこに行き、すぐに戻ってきて、何かを私に投げつけた。
「これで鼻水でも拭いとけ!!」
「あ……ありがとう。それにごめん……。泣きたいのは……あんたのはずなのに……」
「わけわかんねぇこと言ってないで、はよぅ拭け!!」
「拭けはいいんだけど……これ、雑巾だし……。あんた、これ、どこから持ってきたの?」
「男子便所。マチルダ、えんがちょ」
「えんがちょじゃねぇわ!!」
オニクに勢いよく、雑巾を投げ返す。
「あにすんだ!!」
再び雑巾を投げ返され――
「あんたが悪いんでしょうが!!」
延々と――
男子便所の雑巾を投げ合う私とオニクを包み込むように、アメイジンググレイスは聞こえ――
困ったように笑う男の声と――
笑顔が見えたような気がした――
“本当に……二人ともしょうがないね……”
“俺、少し眠るから……”
“また――会いに来てよ――”
“待ってるから――”
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