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「本当に……ズブズブの素人に屋根の修繕とかさせるなよ……。なんかあったらどうするだよ……」
てか、どこに行ったんだか……。
屋根の上であたふたしている隙に、オニクはどこかに消えていて。
深いため息を吐きながら、雨どいをつたい、屋根の上から降りた。
地面に足を着けたのと同時――
風が吹き抜けた――。
雲一つない昼下がりの蒼窮の空に――木々のざわめく音と新緑の香りが私を包む。
風に乗って、歌が聞こえてきた。
「アメイジンググレイス……」
どうやら、教会で聖歌隊が練習している歌声らしい。
『伝えよう。子々孫々……この遊びの幸せを……。どんなに遠く離れていても、二度と会うことができなくとも……忘れなければ良いんだよ。……僕らはこの空の下で強く強く心が繋がっているんだと』
――歌声を聴いていて、唐突にある言葉が頭を過る。
私の初代である毒婦マチルダと――ある男が交わした――
最後の約束の言葉――。
政府による言論統制という――
クリエイターにとって、困難な時代を。
襲名という形で、子々孫々――伝えることで戦い抜き――
再び会おうと交わしたある男との誓いの言葉。
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