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* * *
居眠りしてしまった俺のそばに、馳川が座ったのはわかってた。
だって、それは馳川の匂いがしたから。
それが嬉しくて、そのまま寝たふりをしていたのに。
まさか。
彼がキスしてくるなんて思わなかった。
あまりに優しく触れてくるから、このまま続けて欲しいなんて思ってる自分に驚いた。
でも、途中で止まってしまったから。
もう、これ以上はしてもらえないのかもと思って、たった今目が覚めたフリをしたのに。
そんな優しい笑顔を見せるなんて、反則だろ。
「そ、そろそろ戻るか。」
俺は馳川から離れるように立ち上がった。
密かに、俺自身が反応しかけてることを、彼に気づかれたくなくて。
「あ、俺、柊翔待ってるんで。」
・・・そうだよな。
もしかして、こいつら、そういう仲なのかな。
俺に自然にキスしてくるくらいだもの・・・。
「そっか。じゃ、俺行くわ。」
「はい。気を付けてくださいね。」
「俺は、子供かっ!」
「あははは。」
馳川の笑顔を目の端におさめ、俺は宇佐美を探しに、参道に戻った。
胸の小さな痛みとともに。
-Fin-
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