怪談DJシリーズ「タクシードライバー」

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『ああ、今仕事中か?』 「いんや、自宅でのんびりしてた。どうしたの」 『いや実はな……』  歯切れも悪く語り始める父親。 『この前、お前が実家に来た時に話した事覚えてるか?』 「ああ、タクシーを停めては消える女性の話ね」 『……乗せたんだよ』 「……はぁ?」  意味がわからん。問いただすと、こういう事らしい。  私が実家で父の話を聞いた次のシフトの日。早速、あの道を通る羽目になったそうだ。しかも時間は日付が変わろうとしている深夜。  嫌だ嫌だと思いながらもそんな事はおくびにも出さず、お客さんを降ろして車を発車させた。例の場所に差し掛かる前に1本手前の路地を曲がろうとしていたところ、いつものように手を挙げている人影を発見した。無視しようかとも思ったのだが、相手は自分のタクシーをじっと見ている。  ため息をつくと、仕方なく車を直進させて相手の前で停車した。「どうせドアを開けても誰もいないんだろう」と思いながら後部ドアを開くと、驚いたことに乗り込んでくる気配がする。慌てて振り返ると、ちょうど中年の男性が座席に腰を下ろすところだった。 「え……あれ?」  思わず声を出してしまった父に向かって、乗り込んできた男性は不思議そうな顔をしてみせた。 「何か?」 「あ、いえ……すみません。お客さんが女の人に見えたんもんで。疲れているんですかね」 「ちょっと大丈夫~? 事故ったりしないでよ」  とっさに愛想笑いを浮かべて謝罪を口にし、行き先を聞いてナビに打ち込む。車が走り出すと間もなく、後部座席の男性はいびきをかきはじめた。その後は何の問題もなく、お客さんを目的地まで送り届け、勤務を終えて帰宅した。  だが次の勤務日、タイムカードを押していると相番の男性から声をかけられた。 「おい、○○さん(父の名前)。あんた、この前、一体何を乗せたんだよ?」  いきなりの事に驚いていると、男性は興奮した口調で続けた。 「昨日1日、とんでもない目に合ったよ。乗せる客乗せる客、皆おかしな事言いやがるしよ。1人でタクシー流してても、ずっと後ろに誰かいるような気配がして落ち着かないし。絶対、なんか変なモン乗せただろ!?」  よほどのストレスだったのか、顔つきが尋常でない。目を血走らせた様子は、決して24時間勤務による寝不足のものだけではない。 「お、おかしな事って……?」
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