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意識を手放すギリギリでやっと解放され、後ろの木に体を預けた俺は高科さんを見上げた。
「どうしてって顔してるね。
簡単に言うと、君が好きだからかな」
高科さんがクスッと笑った。
「だから、諦めてね。
約束したよね。
君の時間はもう僕のものだよ」
高科さんは立ち上がって、辺りを見回した。
「このフィールド、気に入ったかい?
君のために作らせたんだよ」
え………。
「君をおびき寄せるの大変だったよ。
いつも回りにいらない蝿が2匹いて、なかなか近づけなかったんだ」
高科さんは俺の頬を愛しそうに撫でると、「もう逃がさないからね」と言った。
「それじゃあ、健人とバーで会ったのも偶然じゃないの?」
「さあ。どうかな?」
なぜだか、高科さんからは一生逃れられない気がした。
……それでもいい。
今日初めて会ったのに、そう思わせる何かが高科さんにはあった。
「もう一回キスしようか?」
コクンと頷くと、
「伊吹はいい子だね」
そう言って高科さんは、今までで一番嬉しそうに笑った。
《完》
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