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「うわ、うまそう」
高校からの親友である健人(けんと)がやってきて、俺の肩越しからハムサンドを取って食べた。
「真史(まさふみ)、誘ってくれてありがとうな」
真史というのは、高科さんの名前だ。
健人は誰とでもすぐに仲良くなれるので、人見知りの俺にはちょっと羨ましい。
高科さんにお礼を言った後、健人が背中から俺に抱きついてきた。
「伊吹(いぶき)、来て良かっただろ?
俺に感謝しろよ」
ちなみに、水原 伊吹というのが俺の名前だ。
「感謝ならお前じゃなくて高科さんにだよ。
すみません、礼儀知らずなもので」
代わりに高科さんに謝ると、「礼儀知らずってなんだよ」と健人がふくれている。
「その通りだろ。
健人、重い。どいてくれよ」
「嫌だね。伊吹が謝ったらどいてやるよ」
二人で押し合っていると、「仲がいいんですね」という声が聞こえた。
顔を上げると、高科さんが笑っている。
けれど、何だかさっきより冷たい表情をしている気がした。
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