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「嘘だろ」
ここにきて、ようやく下劣な笑みが消え、驚いた顔に変わる。
そして次にとる行動は単純で。
「に、逃げろ!」
倒れた仲間など見捨てての逃亡。
しかし、連中の足が動く前に、その鼻先を鋭利な刃が通過する。
セリパが放った投げ斧だ。
ブーメランのような軌道を描きながら、セリパの手元に戻ってきた投げ斧。
それを、少し照れながらセリパはキャッチした。
「エヘヘ、私も離れた敵を攻撃出来た方がいいかと思って練習してました」
いつの間にか戻ってきたカミラクに、頭をポンポンされて、さらに頬を赤らめるセリパ。
こういうときのセリパは、文句なしにスゴく可愛い。
「さて、じゃあ、適当に、戦意も体力も失って、心も挫けつつあるから、マリク頑張ってきてね」
セリパとカミラクをずっと見ているのも申し訳ない気がするので、バカ共と同じように呆けていたマリクの背中を押し、無理矢理前に出す。
すると、連中の目に少し輝きが戻る。
『コイツなら勝てる』
そんなわずかな幻想を抱いて。
そして、再び、戦意を剥き出しに襲いかかってくる。
「うわ、うわ、ちょ、ちょったんま!」
情けない声を出しながら、紙一重のところで攻撃を避け続けるマリク。
とりあえず、生き残るために、真っ先に回避行動を叩き込んだ事はある。
カミラクと違って、大きく、無駄な動きは多いものの、まぁ、とりあえず今回はそれでもいい。
さて、あとは攻撃。
杖での攻撃などしたことないだろうマリク。
『一撃必殺はまだ考えなくてもいい。
とりあえず、当てとけ。
そのうち倒れる』
そんなことをカミラクに言われたらしいけど、それを忠実に再現しているようで、頭でも肩でも、胴、足などなど。
とにかく、隙を見付けたら一発一発を確実に打ち付ける。
……あれ、鋼で出来てるし、カミラクの一撃必殺より、拷問に近いかもしれない。
何発も打ち付け、一人ずつ確実に倒すマリク。
しかし、やはりまだまだか。
あと一人というところで、バカJに背中をみせてしまい、その隙を逃さず、バカJが大上段から剣を降り下ろす。
しかし、バカJも疲れていたのだろう。
汗で滑ったのか、剣は明後日の方に飛んでいき、何も持っていない手が、悲しく空を切る。
さすがに気付いたマリクの反撃でバカJも倒れ、これにて連中は全滅。
私達の勝利が決まった。
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