真のコーラル

3/12
前へ
/14ページ
次へ
ただ、今回は少し違った。 明らかに普通でない感じのお家。 特にお付き合いないからよく分からないけど、ご近所さんらしき人達が集まって、玄関を囲んでいる。 「ちょっとすみません」 彼等をかきわけ漸く玄関にたどり着く。 するとそこには、一面にビッシリと貼られたワラ半紙。 『金返せ!』 『おれらの店で働かすぞ!』 などなど、脅しているつもりらしい文面が並ぶ。 「ははぁ、これはバカがいたもんですねぇ」 感心したようにセリパが呟く。 全くもってその通りだと思う。 「まぁ、ちょうどいい。 少し試したい事もあったし、私としては願ったりだな」 さりげなくセリパの頭を撫でるカミラクは、間違いなくイケナイ事を考えてる。 ……私に害がないからいいけど。 「ど、どうすんだよ!に、逃げるのか? な、なぁ夜逃げか?」 青ざめた顔で、泣きそうになっているマリク。 うん、そうねぇ、どうしようか? 「うわぁ、せっかくトレジャーハンターになったのに、夜逃げとかねぇよー!」 まだ何も言ってないのに、子供みたいに泣き出したマリク。 あ、まだ子供か。 なら仕方ない。 あんまり得意じゃないけど……。 「大丈夫だから、泣かないの?」 「フ、ガ?ん、ん~」 泣き出したマリクを抱き寄せ、思いっきり抱き締めてあげる。 確か、子供ってこれで泣き止むのよね? これで、背中をさすってあげるんだっけか? 「あ、ナゴさん。 マリク君が窒息しそうです」 セリパの声でマリクをみれば、手をジタバタさせてもがいている。 ……お子ちゃまには、これも刺激が強すぎるの? 「し、死ぬかと思った」 ゼーゼーと肩で息をするマリク。 うん、とりあえず泣き止んだからヨシ。 「へいへいネーチャン。 俺にもやってくれや」 ドラゴンの声のが可愛く思えるような、下品な声に振り返れば、そこには、案の定下品そうな男。 舌なめずりしながら、私の身体をジロジロと見ている。 「へへ、どうしようかと思ったけど、俺の愛人になるなら借金はチャラに……」 そこで男の言葉は途切れる。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加