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ただ、今回は少し違った。
明らかに普通でない感じのお家。
特にお付き合いないからよく分からないけど、ご近所さんらしき人達が集まって、玄関を囲んでいる。
「ちょっとすみません」
彼等をかきわけ漸く玄関にたどり着く。
するとそこには、一面にビッシリと貼られたワラ半紙。
『金返せ!』
『おれらの店で働かすぞ!』
などなど、脅しているつもりらしい文面が並ぶ。
「ははぁ、これはバカがいたもんですねぇ」
感心したようにセリパが呟く。
全くもってその通りだと思う。
「まぁ、ちょうどいい。
少し試したい事もあったし、私としては願ったりだな」
さりげなくセリパの頭を撫でるカミラクは、間違いなくイケナイ事を考えてる。
……私に害がないからいいけど。
「ど、どうすんだよ!に、逃げるのか?
な、なぁ夜逃げか?」
青ざめた顔で、泣きそうになっているマリク。
うん、そうねぇ、どうしようか?
「うわぁ、せっかくトレジャーハンターになったのに、夜逃げとかねぇよー!」
まだ何も言ってないのに、子供みたいに泣き出したマリク。
あ、まだ子供か。
なら仕方ない。
あんまり得意じゃないけど……。
「大丈夫だから、泣かないの?」
「フ、ガ?ん、ん~」
泣き出したマリクを抱き寄せ、思いっきり抱き締めてあげる。
確か、子供ってこれで泣き止むのよね?
これで、背中をさすってあげるんだっけか?
「あ、ナゴさん。
マリク君が窒息しそうです」
セリパの声でマリクをみれば、手をジタバタさせてもがいている。
……お子ちゃまには、これも刺激が強すぎるの?
「し、死ぬかと思った」
ゼーゼーと肩で息をするマリク。
うん、とりあえず泣き止んだからヨシ。
「へいへいネーチャン。
俺にもやってくれや」
ドラゴンの声のが可愛く思えるような、下品な声に振り返れば、そこには、案の定下品そうな男。
舌なめずりしながら、私の身体をジロジロと見ている。
「へへ、どうしようかと思ったけど、俺の愛人になるなら借金はチャラに……」
そこで男の言葉は途切れる。
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