真のコーラル

6/12
前へ
/14ページ
次へ
「早い方がいいわよね? カミラク、試したいのって魔法?」 「ああ。この前、古書店で見かけた魔道書にあったやつだ。 魔法の威力と、私の魔力から察するに、連中のアジトが地下にあったとしても確実に潰せる」 なるほど、なら安心ね。 「あ、でも、この前『魔法が使えない洞窟』っていうダンジョンの話してましてよね? もしいくなら、ここでカミラク様が、マリク君に杖の戦い方を教えてあげた方がいいかも」 あ~確かにそれある。 回復魔法と、ほとんど使わない補助魔法しか使えないから、ここで攻撃要員としても使えるようにしときたい。 「なら、カミラクの魔法でアジトを潰して、逃げたやつを一人ずつ狩っていきましょう。 アジトの場所は分かってるし、今夜さっそくで」 「おお、ついに俺も正義の味方に!」 私の声に、興奮するマリク。 対照的に、カミラクはめんどくさそうに返事をする。 そのついでとばかりに、セリパを後ろから抱き締める。 「子供のお守りか。 まぁ、仕方ないが、あぁ、面倒だな。 全く、セリパが余計な事言うから」 ……しかも、後半はセリパの耳元で。 「ヒャウ!カミラク様ごめんなさい。 でも、私、カミラク様の杖さばき観たいです」 「ふふ、今夜のが片付いたら、違う杖さばきもみせてあげるよ」 「キャッ!カミラク様~」 ……まだ色々言ってるけど、これ以上はいいや。 すでに二人の世界に入ったカミラクとセリパをそのままにして、マリクに向き直る。 「とりあえず、今夜仕掛けるから、日暮れまでに家に戻っておいてね。 攻撃にも用いるなら、今の杖だと柔らかいから、新しいのをカミラクに見繕ってもらって。 私は、一応偵察してくるから」 そう言い残し、マリクの手に金貨を握らせると、私は一気に駆け出した。 後ろから、 「え、あ、ちょっと待てよ! この二人、どうすんだよ!」 なんて叫び声が聞こえるから、適当な民家の屋根に登って、マリクからは見えない位置を陣取り、その行動を観察する。 さて、あの二人相手に四苦八苦するマリクを見物でもしてようかな。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加