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「早い方がいいわよね?
カミラク、試したいのって魔法?」
「ああ。この前、古書店で見かけた魔道書にあったやつだ。
魔法の威力と、私の魔力から察するに、連中のアジトが地下にあったとしても確実に潰せる」
なるほど、なら安心ね。
「あ、でも、この前『魔法が使えない洞窟』っていうダンジョンの話してましてよね?
もしいくなら、ここでカミラク様が、マリク君に杖の戦い方を教えてあげた方がいいかも」
あ~確かにそれある。
回復魔法と、ほとんど使わない補助魔法しか使えないから、ここで攻撃要員としても使えるようにしときたい。
「なら、カミラクの魔法でアジトを潰して、逃げたやつを一人ずつ狩っていきましょう。
アジトの場所は分かってるし、今夜さっそくで」
「おお、ついに俺も正義の味方に!」
私の声に、興奮するマリク。
対照的に、カミラクはめんどくさそうに返事をする。
そのついでとばかりに、セリパを後ろから抱き締める。
「子供のお守りか。
まぁ、仕方ないが、あぁ、面倒だな。
全く、セリパが余計な事言うから」
……しかも、後半はセリパの耳元で。
「ヒャウ!カミラク様ごめんなさい。
でも、私、カミラク様の杖さばき観たいです」
「ふふ、今夜のが片付いたら、違う杖さばきもみせてあげるよ」
「キャッ!カミラク様~」
……まだ色々言ってるけど、これ以上はいいや。
すでに二人の世界に入ったカミラクとセリパをそのままにして、マリクに向き直る。
「とりあえず、今夜仕掛けるから、日暮れまでに家に戻っておいてね。
攻撃にも用いるなら、今の杖だと柔らかいから、新しいのをカミラクに見繕ってもらって。
私は、一応偵察してくるから」
そう言い残し、マリクの手に金貨を握らせると、私は一気に駆け出した。
後ろから、
「え、あ、ちょっと待てよ!
この二人、どうすんだよ!」
なんて叫び声が聞こえるから、適当な民家の屋根に登って、マリクからは見えない位置を陣取り、その行動を観察する。
さて、あの二人相手に四苦八苦するマリクを見物でもしてようかな。
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