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「よかったよ、咲希ちゃん」
俺はラジオをBGMに切り替えた後、そういった。時計を見ると、誤差は2秒以内だ。今回も無事に放送を終了することができた。
「お疲れ様です」
咲希が伸びをしながら収録室から出てくる。今は午前3時。この時間に起きてラジオを聴いている人間がいるのか疑わしいが、意外にリスナーからの評判はいい。
「次でようやくラストですね」
「ああ、そうだね」
今日は物語のクライマックスを盛り上げる話だった。次がラストで物語のオチを作らなければならない。
「どうでした? 私の魔女」
「最初よりずっといい声になったよ、咲希ちゃん、やっぱり才能あるね」
俺はお世辞抜きに彼女の声を褒めた。彼女は白雪姫と魔女の声を二つ自分でやり取りしている。つまり今回に限っては全て一人芝居だ。それをきちんとこなした彼女には努力だけでは図れない力を感じる。
今回の物語は『白雪姫』だ。世界で一番美しかった后が自分の娘の美しさに嫉妬し、殺そうと画策するが、中々殺せず、自分を魔女に化かして娘に毒リンゴを食べさせるという話である。
もちろん后は老いぼれた魔女のまま死ぬ、突っ込みどころ満載の話だ。
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