無頓着

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無頓着

 友人の中に、一人、とんでもなく無頓着な奴がいる。  髪型。邪魔になる長さになったら切る。  服装。暑さ寒さが凌げればいい。  食事。腹が膨れればOK。  一事が万事こんなふうだが、性格的にはいい奴だし常識も弁えている。だから友人付き合いに問題を感じることはなかった。  でも、この前コイツを含めた友人数人で旅行をした後、ちょっと考えが変わった。  男数人での気楽な旅行。その中に一人、かなりのカメラ好きがいて、暇さえあれば誰かの写真を撮っていた。  そいつが、両行から帰って暫く経った後、全員になるべく早く集まれないかと連絡してきたのだ。  切羽詰まったものを感じ、こんなでスケジュールを調整して、連絡から一週間後くらいにそいつの家に集まった。  そこで見せられたのは奇妙な写真だった。  膨大な写真の中に、かなりの確率で妙な物が映り込んでいるのだ。そしてよくよく見れば、それは総て、あの何事にも無頓着な友人が映っている写真に出現していた。  だから、多分その友人に何かあるのだろうけれど、一応、旅行に赴いた全員を呼んだ。その上で、この奇怪な写真をどうするかを決めようとカメラ好きの友人言った。  でも、その真剣な訴えを聞くなり、例の無頓着な友人はこともなげに言ったのだ。 「ああ、気にしなくていいよ。これ、昔から、いつも写真に写る奴だから」  他の全員が絶句した後、ちょっとした質問大会になったが、写真に写ってる位奇妙なものは、かなり昔から、無頓着な友人の写真には確実に存在しているということだった。  いったいそれは何なのか。怖くはないのか。お祓いとかは考えないのか。  そらにそんなことをみんなで言うが、当人はあっけらんかとしたもので、今までなんの害もないから、気にならないし放置していると口にした。  …今でもそいつとは友達だし、一緒にどこかへ出かけたりもする中だ。でも、この件を知る誰一人として、そいつと一緒に写真を撮ろうとは決してしない。  その、微妙な避け方にすら気づかずに、無頓着な友人は、出会った頃のまま何一つ変わることなく暮らしている。 無頓着…完
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