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山形の田舎で育った私は、引っ込み思案でいつも地味だと言われていた。成績だけは良かったので、勉強を頑張り、東京の女子大に進学することになる。
東京に行けば、きっと変われるはず。淡い期待を抱いて上京したものの、私の生活はやっぱり暗くて地味だった。
友だちもできず、一人ぼっちだった私は、近くのファミレスでバイトを始める。私の教育係りになった、欲求不満の主婦、橋本さんは、私にすごく意地悪だったけれど、一緒に働く大学生の大嶋さんは、何かと私に親切にしてくれる素敵な人だった。
その頃、外に出ると私はいつも不気味な視線を感じていた。郵便受けには『君のことをいつも見守っているよ』とだけ書かれた手紙が届くし、ケータイにもテキストが届く。
誰かが私をストーカーしている……。
私は毎日恐怖を感じながら生活していた。
そんな私を恐怖から救ってくれたのが、大嶋さんだった。近くに住んでいた大嶋さんは、行き帰り一緒に歩いてくれたし、何かあったら遠慮なく電話してくれ、と連絡先もくれた。
ようやく出来た友だちのユウカに大嶋さんのことを相談すると、ユウカは、絶対大嶋さんは私に気があるのだ、という。ユウカと話しながら、客観的に判断すると、やっぱり大嶋さんは私のことが好きにちがいない、としか思えなかった。
大嶋さんは、私が連絡すればいつも来てくれたし、一緒にアイスを食べに行った事もある。朝だって、私がいる時間に迎えにきて駅まで送ってくれた。
ところが、勘違い女が大嶋さんにつきまとい始めたのだ。私は、大嶋さんを困らせる勘違い女を突き止め、その女の家に行って、大嶋さんにつきまとわないよう何度も警告した。
それなのに……、大嶋さんは、怖い顔をして「いい加減にしてくれよ、このストーカー」と私に向かって叫ぶ。私は、思わず我を忘れて、二人に向かって包丁を突き刺していた。
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