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―蒼架学園高等部 学生寮 雪夜の部屋(10階)―
あれから、ゴリ男達へ『灸』を据えていたら、下校時間が過ぎてしまい、守衛室に連絡して、校門を開けてもらうしかなくなった。
何故だか、異様に疲れた気がして、『ボスッ』とリビングのソファーに身を横たえた。
―リンゴーン、リンゴーンッ
不意に鳴ったインターフォンに、『ハッ』と我に返り、受話器を取った。
雪夜
「…………はい。こんな時間に誰だ?」
疲れと言うか、ストレスからだろうか。ついつい、低い声と冷たい言葉で応対してしまう。
すると、訪問者は驚いたのか、息を飲む音が聞こえた後、おずおずと言った。
訪問者
「………あ、の。雪……………ごめ、寝てた?」
戸惑いを孕んだ哀しげな声に、弾かれたように起き上がり、バタバタと玄関に向かい、ドアを開けた。
雪夜
「………琳だったのか。ごめんな、疲れてたから、対応がぶっきらぼうになった。怖がらせたか?」
目の前には、大切な幼馴染み『御神 琳耶』が立っていた。垂れた犬耳と尻尾の幻影が見える。そっと頭を撫でると、『パッ』と顔を輝かせ、尻尾を『ブンブンッ』と千切れそうなほど振っている。
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