旅の途中

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別に、ぼくは捨てられたわけじゃない。見つけさえすれば、電話するように言われているし。直ぐに迎えに来てくれる、と言ってくれたし。 ただ、今朝5時の夢真っ只中で無理やり起こされて、意識がボンヤリしている中で着替えが完了したところで、さぁ行ってらっしゃい。と、見知らぬ土地に放り出されてしまえば、呆然として彷徨っても仕方ないと思う。そのまま歩きまわっていれば、疲れる。だって既に昼を過ぎている。 朝食を済ませる暇もなく、相棒探しの旅に出されて、昼食も食べていないなら、空腹による記憶力低下を引き起こすのも当然だと思う。そんなわけでぼくは、ようやく思い出した。 だって、思い出すでしょ。 ぼくの足元にこんな可愛い白猫がすり寄ってくれば、さ。幸い、首輪を付けてないから飼われてないみたいだし。綺麗な歌声に魅かれていた時に現れたんだから、もう出会う運命だったんだ。 ぼくは、子猫をジッと見つめる。 「ぼくの相棒になってくれるか?」 子猫はミャ。と短く鳴いた。よし、連れ帰ろう。建物の外に出て、ぼくは携帯電話を取り出した。
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