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相棒を見つけた報告を済ませて、迎えに来てくれるまでの間、もう一度建物の中に入る。歌声がまだ聞こえていたから。
相棒を抱きながら今度はきちんと客になるべく。
途中で歌声が途切れた。2人の女性がぼくを見ている。不審者と間違えられているのかな。既にぼくの身長は170cmを超えている。大人に見られてもおかしくない。
「こんにちは。歌声が聞こえて来たので、気になって」
ぼくがにっこり笑って声をかけると、女性達も微笑んでくれた。
「今度、音楽祭が有るの。それに出場するから練習をしていたのよ」
相棒の子猫を見て、余計に親しみを感じてくれたのかもしれない。そんな説明にぼくも説明した。事情が有ってこの子猫を探していたこと。その時に歌声が聞こえて来たこと。その歌声に惹かれたように子猫が見つかった事。今、親に連絡をして迎え待ちだということ。
「それで迎えに来てもらうまでの間、歌を聴かせてもらいたい、と思って。ダメですか?」
ぼくのお願いに2人は喜んで、と最初から歌い出した。2人の歌声はやっぱり、爽やかな風が吹いているように思えて、ずっと聞いていたい、と思うものだった。相棒の名前、シングにしようかな。歌。まさにぴったりだと思うんだ。
その場に座って目を閉じて聞き入っていたぼくの側で母が立っていたことに、気付きながら、シングの温かさを感じていた。
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