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風が頬を撫でるように吹いてきた。その優しさに目をそっと開けた時だった。何処からか綺麗な歌声が2つ。
耳に馴染む。
音の出所を知りたくて、痛む足を押して歩き出した。少し歩けば、建物の入り口。その入り口の扉が開いていて、歌声が強くなった。
建物の中だ。
そっと扉から中を窺う。人影が見えなくて、靴を脱いでこっそり中に入り込む。多目的ホールらしきそこのステージ上で、女性が2人、佇んでいた。他に人影は見当たらない。間違いない。この女性2人が、歌声の主だ。
向こうはぼくに気付いていないようだ。
このまま気付かないで欲しい。と思いながら、2人を見つめる。少し遠いけど、容姿は解る。1人の女性はメガネをかけて綺麗なサラサラな肩までの髪が特長的で、なんていうか優等生タイプのしっかり者のイメージ。もう1人の女性は、メガネの女性より少し高い背丈がカッコよくて一つに束ねた髪が良く似合う、颯爽とした姉御肌のイメージだ。
2人とも、華やかではないけれど、人目を引く女性だった。何か会話している。何を話しているか、解らないけれど、雰囲気として楽しい会話というより、何らかの話し合いに思えた。
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