1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…っせい?いっせい!一静ってば!!」
「っ………カナ?」
大声で名前を呼ばれ驚いて起きてみれば、恋人のカナが「もうっ!」と少し怒ったように頬を膨らませていた。
「そんな所で寝てたら掃除できないじゃない!外に行くか隅っこに行きなさい!」
怒る彼女を呆然と、リビングに寝そべったまま見上げる。
「…ちょっと一静さーん?聞こえてますかー?」
一向に動こうとしない俺の目の前で、カナは俺が起きているのか確認するように手を何度か振った。
そのヒンヤリとした手をそっと握りしめる。
「カナ…」
「ん?どうしたの」
カナが床に膝をついたから、すかさずその膝に頭を乗せた。
「ふふっ、どうしたの?今日は随分と甘えん坊さんだね?」
そう言って少し笑ったカナは、俺の髪を優しく梳いてくれる。
冷たい指先が地肌に触れるたびに、涙が出そうになった。
「俺な、今すっげー怖くて嫌な夢見ちゃったんだ」
「へーどんな夢?」
「あのなー」
と、甘えるようにカナの膝でゴロゴロと頭を動かし、下からカナを見上げる。
「カナが俺をおいていっちゃう夢。病気で死んじゃって…もう二度と会えなくなるんだ」
「ちょっと、いくら夢だからって人を勝手に殺さないでくれる?」
「ははっ…うん、ごめん…ごめんねカナ」
俺を見下ろすカナの頬に触れてみる。
その頬もやっぱり冷たい。
頬を触る俺の手に、カナの冷たい手が重なった。
ああ、何で君の手はこんなにも冷たいのだろう…。
何で冷たいことに気づいてしまうのだろう…。
カナが微笑む。
最初のコメントを投稿しよう!