~記憶の護り手~

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  白い空間。 胸元まで伸びた自分の後ろ髪が、其の白さを際立たせている。兄や師に憧れて伸ばし始めたものだが、共に伸びろと願った強さは、少しは彼らに追い付いているだろうか。 試す暇も無く、始まってしまった。 足りないものが多過ぎる。其の中で自分は今、何を得る事が最善だろうか。ミナギに訊いておけば良かったものを、大人の声を避けるが如く、勢いのままに飛び出してしまう悪い癖は昔からだ。 ユメイは僅かに己を責めた。これからはもう、護らなければならないものがある。自分が逃げていては本末転倒だ。 (情けない…僕は本来の強さの意味さえ、今日の今まで知らなかったって事だよね…) いや、恐らくは知ろうともしていなかった。 護られている事がバランスでもあったと、早速自分に言い訳をしている。 そう云う自分が居るのだ。何処にとは形容し難いものであるが、意識の片隅とでも言えば通じるだろうか。 (僕は自分とも、戦わなくちゃいけないな) 意識が傾くと同時。 無かった筈の影が伸びて、足許から。 「……えっ!?」 自由を得る影は、聞き覚えのある声で笑い出す。 ≪やっぱり君は、何も覚えていないんだね≫ 「白夜…」 心が僅かに。 だが今は、向き合えた。遅かれ早かれ会う事があるのならと少し、腹を括れているのかも知れない。 考える事が“隙間”なら、この対峙はどちらにしろ、避けられないものの様にも感じられる。ユメイは早速ミナギに渡された【光の欠片】へ手を伸ばそうとするのだが、其れより速く影が語り掛けて来た。 ≪少し、話をしよう≫ 「話…?」 ≪そう。昔々、この世界が二つに分かれる前の話さ≫ 「どうして…」 ≪知りたそうな顔をしている≫ 「其れでも、君から聞こうとは思えないよ」 ≪どうして?≫ 「たくさん傷付けたでしょ、僕の仲間を」  
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