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ユメイは今、はっきりと理解した。
己が何故、外の世界を好んでいたのか。何故それは杠葉に無いのか。
何度止められても抑えられない衝動の在処がきっと、時季詠弥であり、己を待つそれぞれの地なのだろう。
「自信を持て。初動こそ遅いが…お前の判断、勘の良さは俺も信頼している」
「……!」
再び、気分が僅かに高揚する。
城を抜け出した時のあの、解放感に似た躍動が、心を擽った。
元の天真爛漫なままで在れと、ライが背中を押してくれたからだ。
アカツキは自分を、彼の友と定めていた。
孤高に振る舞うばかりの師であるが、本当は、彼も自分を探していたのだと今、はっきり思い出した。
言われたのだ。最初に会った日。
ライは間違い無く己に「相変わらずだ」と呟いた。
「今日からまた、ライさんって呼んで良い?」
「敬称に違和感がある」
「流石に呼び捨ては無理かなぁ。師匠の方が歳上になっちゃったもん!」
「好きに呼べ。今更…揺らぐものは無い」
「うんっ!」
思い出せるものはまだまだ少ない。
其れでも、今は充分過ぎる収穫だとユメイは笑った。
「ルリにも後で話すね!」
「えっ?」
「ルルナさんの事、少しだけわかったから!」
「…!、はい!」
精霊となった先代・水翠の御子。
ルリが御子を継いだと同時に会えなくなった護人・ルルナは、彼女の母である。
名を聞いた途端、ルリも嬉しそうに笑い、頷いた。
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